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浅瀬で蠢く蟹の脚
清き日も 澱んだ日も
藻屑を背負い 其処に在る

お前ごときが
ビルの上から見下している
そんなお前を
高層ビルより見下して
更なる高みの視線に怯える

殺意すら覚える者達に
表面上の敬意を示せ

こいつには
本音を奏でて
いいのでしょうか

人並みの幸せから剥離する
距離が開く 虚位に傅く
脅迫染みた 袋の虫よ
蚕豆状の 愛を下さい

ひたり ひたり
過ぎし日の微笑が
いつまでも
いつまでも付き纏う
浸された
幸福論の片隅で

掛け替えの無い
時間だから
後悔だけは 後悔だけは

繋がって 繋がって
何処までも 何処までも
何処へ行こうが 何をしようが
繋がれて 繋ぎ止められ
救われる 反吐が出る

断ち切る事の出来ぬ鎖が
今、
誰かの心を癒している
誰かの心を傷付けている

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遮断機の点滅に呼吸を重ね
行き交う縫い針の進行に
気付かれぬ様、無償の愛を

僅かな揺らぎに安らぎ覚え
遥かな歪みに怯える人よ
どうか
どうか、踏み切りの内側にて
素敵な夜を御過ごし下さい

お先にどうぞ
お構いなく

皆が皆、
後へ後へと尾を連ね
気遣い装う仮面の下で
不平等の轍を辿る

途切れる事無く飛び回る
筋張る羽と権利の応酬

主張、主張の果し合い
整合性などあったものか

誰かが幸せそうに笑っている
誰かの不幸を笑っている

豊かさに満たされながら
貧しさを掻き雑ぜる

靴底の救いなど
あってはならない

掬い取られる魚の様に
俎板の上で捌かれるがいい

歩きなさい
空だけを見て
笑っていなさい

莢の中から零れぬ様に
蚊帳の外へと転ばぬ様に

強く強く、
地面を踏み締め
笑っていなさい

RETURN▲

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夜が明けるらしい
か細い喉を往来する
子供達の行進

残響の様な幸せを
心象の内側から打ち付ける

金槌を持つ手は
震えている
相槌を打つ背は
揮えているか

覆い被さる愛の光源
偽造された朝日の後ろに
僕の影は無かった

清潔な指は
本当の所は汚れていて
簡潔な夢の中へと落ち込む
蟻の如き視点から
幸せを見つめ直してみる

続きは
眼が冴えた現実で
つまりは
芽の生えた落日の果てで
失念した己の色を
拾ってゆかねばならない

あ、見て見て御来光！
慈愛の光が
にこにこにこにこ
私のカラダに微笑んでるよ

嬉しそうな君の横顔
悲しそうな君の半影

覆い被さる愛の光源
偽造された夜明けの果てに
僕の陰へと呑まれてしまえ

見据える先が
僕の光でありますように
君の笑顔が咲きますように

RETURN▲

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額縁に垂れ下がるつららを前に
抱き抱えてきた現実が
柔肌を開(はだ)けながら
膨らみを増してゆく

春を迎えるに当たり
我々には栄養が足りません

血の気の失せた顔色が
地吹雪に呑まれながら笑っている

ザクザクと雪を掻く
サクサクと腹を裂く
悴んだ手、はにかむ鼓動
一足早い温もりに
一刻早い朝日が昇る

コリコリと
腸を噛み締める
コツコツと
腹這いに積み上げる

腹を裂く花が咲く
融け始めの白日が
持ち越せぬものたちを
連れてゆく 消してゆく

春が来た
春が来たよ

喜びに身悶えながら
もぞもぞと這い出た先に
君の姿は見つからない

暖かな日差しの中で
持ち越したものの重さに
また圧し潰される

夏を迎えるに当たり
我々には栄養が足りません

血の気の失せた顔色が
桜吹雪に呑まれながら笑っている

RETURN▲

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来る日も来る日も
真っ白な配色に埋もれ
氷点下の吹き溜まりより
重厚な曇天へとレンズを向ける

不当にあしらわれようと
声を荒げてはいけない

横殴りの雪に
瞼を掠め取られようと
決して睨みつけてはならない

靴の底で
鉄の床にうつ伏せて
貴様らを
傷物にしてくれるわ

雪を掻き 指を欠く
踏み出す足の損傷は
積み足す明けの感傷に
浸されて、
満たされて、待たされる

殴られても蹴られても
手を上げるべからず

鬱屈して鬱血して
不純物に犯されようと
微笑みながら受け入れなさい

従順な家畜めが
耐え忍ぶ先を見据えてみよ
其処に花は咲いているか
蝶は舞っているか

そう、
春は訪れない

RETURN▲

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浴槽に沈められた人形が
勇ましく吼えている

犬が
犬畜生めが

頭の上に螺子を乗せた
貴様らの口車に搭乗する
視点の定まらぬパイロットが
エサ箱へと首を伸ばす

弾頭が空を仰ぎ
断頭が地を舐める
暖冬より生じた首無し地蔵

先制攻撃に至らぬ
牽制口撃

喉を焼いて
緯度を裂いて
擦れた声で叫び続ける

頭骨と金具の繋ぎ目に
優しく油を注しておくれよ
焼け焦げてゆく虫の瞳に
愛するものの影が揺らめく

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澱んで濁って沈んで
霧の中を掻き分け進む

窮屈で偏屈な
信号機の様な規律正しさ

停止する人の波
軽視する人となり
財布から飛び出した従属が
横断歩道の線をなぞって
高笑いをしている

赤い雲が空で渦巻く
甘い草が傍で嘯く

蹲るのは誰ですか
青に変わった信号に
背を向けて 眼を背け
渋滞する
道の中心で這いずり回る

要求を
要求を受け入れるのです
早急に、永久に
恒久の無抵抗を貫くべきです

さぁ、おもいきり
深呼吸をしてみて下さい
肺の中に入れてみれば
心がほっと落着きますよ

RETURN▲

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摘んで剥した薄皮を
積み上げ重ねて
縫い付ける

生い茂る草花よ
老い陰る楔をしゃぶり
斑の種を吹かせておくれ

苗床の定まらぬ
鬱積した理想を詰るのは
密閉された
日溜りで俯く
向日葵

発酵した頭の中で
拮抗した灯りを求め
来る日も来る日も
くるくる、くるくると
首を回し続ける

暗がりの中で集る様に
日差しの中へ集る
まるで虫の様ではないか

脈動する神木は
捻り込まれた亀裂を潤し
枯れてゆく
枯らされてゆく

臨むのは肌色の山脈
抉れた土壁を睨み
熟した肢体を組み上げる

あと何体で
事足りるのだろう

皮を剥す 肌が熟れる
俯き零れて 常世へ連なる

鬱陶しい柵(しがらみ)は
今日も明日も、これからも
この血潮に準ずる往来を
塞き止めてゆくのだろうか

綺麗でしょ
素敵でしょう

斑の花が微笑んだ
誰かの色へと染められた
ぎこちなさげな 花弁をゆらして

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