2017年03月不完全きのこ

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きのこの輪

2017年の詩

きのこの輪

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拓けた土地は孕まない
受け取るだけの
頭に実る言葉は在らず
踏み抜く板を不様に睨む

憐れな小人の戯れさ
きのこの群生
滑りを帯びた虚弱な信仰

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2017.03.18 ▲

一振りの筋

鳴り止まないのは
今日に限った事じゃない
聞いているのは
確かに君だ

其処に違いは
在るのだろうか

模造刀より毀れる記憶
掛け替えのない
一振りの筋

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2017.03.17 ▲

凌ぐ心へ

喉仏へ縋り付く
吐き捨てるべき激情は
叩き割られた氷の粒と
暖かな陽へ透かされる

遠退いて行く幸せも
それが手元に在るが為

噛み締めて
踏み締めて
解けない雪を凌ぐ心へ

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2017.03.12 ▲

眼虫の糸

短めの竿を脇に差し
日の出と共に
崖を見上げる

あの頂を恥じていた
へばりつくまま
頭を垂らしたあの頂を

振り上げようとも
声は失墜するばかり
彼もまた
足元の虫を目に棲まわす

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2017.03.08 ▲

えらのなめり

湖底を統べる意志の罅割れ
水面は何も
知らぬ素振りで
浮かんだ魚を天へと掲げる

もう此処は冬じゃない
鰓の隙間を刃が滑り行き
身が狂い咲く

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2017.03.07 ▲

名も無き墓標

隔てた夢に挟まれて
どっち付かずの
身を磨り減らし春を迎える

何れは解け行く
定めかな
流した涙はもう消えたのさ
当ても無いまま

笑顔で送って欲しいから
空の器へ声を閉じ込め
せめてもの
謝意を置き残す
誰も覚えていなくとも

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2017.03.06 ▲

転がる果実

気が付けば
月は消えていた
目が眩む程の空に呑まれて

引かれていたのは
星じゃない
糸巻き車を満たす心音
砂の掌

煌びやかな尾が
揺れている
ただそれだけで
ただここにある
ただにひとしい転がる果実

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2017.03.05 ▲

宿借り

地続きのまま
死ねたらいいね

絶え間ない型
消えては寄せる
記憶を抱えた花が舞い散る

またいつか
真っ白な顔で逢いましょう
土の上には
落とした言葉が積もり行く

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