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顔の無い風が
抱く事も無い雨を横目に
思い出す事の無い
名前を憂う

確かに其処に在ったのに
消えてしまえば
誰も知らない
そんな流れに抗うように
匂いを音を温もりを
纏った影が体を成す

言葉に残っていなくとも
至る所で何かの記憶が
蠢いている

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満月は今もそこに在る
何処に逃げても
距離が縮まる事も無く

円らな瞳が生えていたんだ
背中を焼かれる事も厭わず
引き延ばされる時の隙間で
爛爛と身を継ぎ合わせ

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一輪の首が転がって
冷たい路面に陽が伸びる
痙攣するのは山々だ
体ではなく
亀裂に溜まれ
卑劣に染まれ
繁茂しながら苔に紛れて
今日も私は言葉を失う
生きているのに
活かしきれずに

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興味の外から掴まれる
意識そのもの
景色諸共
積み上がっていたものが
形を変えて暮らしを飲み込む
屍の上に立っていたんだ
生まれた時から

木々がくすんで霧と媾う
裏葉色へと還る道中

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見返る場所はそれぞれに
黒塗りの窓から
巣立って着飾る箱の街
焼香から立ち昇れ
希望に満ちた翌を見据えて
亡き者の背を乗り越えて行く
無き物が
まるで有るかのように
憑き物が
其処で果てたかのように
各種各様
偽り移ろう脈打つ限りは

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境界線なぞ弾いてしまえ
心も体も全てが等しく
収まる以前に

幸福がまた交わっている
苦しみを薄く磨り潰す為
悲しみを軽く受け取れるよう

手と手が連なり肉を成す
皆の身体だ
口角は常に上がっているのに
開いた瞳はかさついている
笑えないのだ今はまだ
安らぎはいつもそこに在るのに

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切断面から
羽根を生やそう
温もりが
消えて仕舞わぬ内に
鋭利な刃物に屈せぬ様に

抽象的な被害者は
人にも鳥にも成れやしないさ
加害者が遥か眼下にあっても
未だ地に足を着けている
既に何処でも
飛んで行く事が出来るのに

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鮮明に肌は晒されて
球体である意味を見失う
行方知れずだ
気付いた時には

こいつは覗き穴ではない
塞いでいたんだ
闇夜を視線が舐めない様に
己の形を悟られぬよう

横切ったのは何処のどいつだ
握り締めた指の先から
一節二節
繋がり断たれて
出来損ないの陽が土に染む

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