密室
ひしゃげた身体に刻まれた
君の名前が また燻む。

僕もまた 一つ歳を取る
錆付くその身を晒したままに。

飲み込みきれずに嘔吐した
あなた宛ての 言の葉は
雨に打たれて くずおれて
何処にも往けずに淀んでく。

終着には何も無く
執着だけが渦巻く場所で
ぐるぐる
ぐるぐる廻ってる。

すぐ横では 暖かな
日差しが注ぎ そよ風の
運ぶ花びら 桃色染めて。

当たり前に生まれ
当たり前に学び
当たり前に過した道の先、
当たり前と言う名の風景は
当たり前という幻想だったのかも知れない。

あなたが消え ぼくが消え
やがて 幾重もの板により
遮断された部屋の中、

塞がれた想いは
いつまでも いつまでも
密室の中 吹き溜まり続ける。

密閉されたこの場所の
煤けた空気を浴びながら
差し込む日差しに身を寄せる
虫の羽音は休む事無く。

当たり前に張付いて
当たり前に死んでゆく。

結局のところ
ぼくと この虫たちに
何か違いがあったのだろうか。

窓の外の風景を
夢見て散って 積みあがる
虫の骸(むくろ)に埋もれながら

それでもぼくは
懲りもせずに
ぐるぐる
ぐるぐる廻り出す。

いつの日か この場所に
新しい風が生まれる事を願って。
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2008.05.08