排卵コンクリート
池の鯉
跳ね上って蝶になり
夜と朝との境目に
びっしり卵を産み付ける

紫色に染まる空
雑居ビルに被さって
窓や扉は塞がれた

僕たちは
時間軸の急襲に
怯えて声も出せずに
石の下で丸まっている

貪欲な地平線に
今、
引き擦り込まれてゆく


もう
跡形も無く
吐き出される思い出だけが
不確かに
かつてを彩っている

無意識の球体の上で

飲み込んでは排出し
組み込んでは検出し
溜め込んでは噴出し
埋め込んでは摘出し
詰め込んでは棺出し遠ざかってゆく

池の水は鏡の様に
蜈蚣の行列を色付かせ
境目で脈打つ卵の様に
捲れた社会を蛍光色に彩っている
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2008.09.08