春の山道
重く憂鬱な雪が融けたなら
泥濘塗れた山道へと赴こう

その姿を溶け込ませ
水の作用へと浸透しながら
潤いは時に
釈放された者たちを
窒息させる

芽吹き始めた囁きに
呼吸器が圧迫され
徐々に虚ろになってゆく
純粋無垢な瞳と共に
私を蝕んできた
長く不快な
純白の4ヶ月は引き裂かれてゆく

ぬるりぬるり
産道からひり出される夢
生みの苦しみ
色褪せた排泄物
結局は
憧れ少々
焦燥多数の
不具な情景に見惚れながら
今と言う知覚を
浪費しているだけに
過ぎないのかもしれない

得るものすら把握できず
知ることから目を背け
減ってゆくという自覚だけが
春の参道を徒列を成し
行進してゆく

埋もれ
木漏れ日の中顔を出す
腐りはじめた犬の死体を
俺ははじめて抱き寄せてみた
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2009.03.08