瓶詰め廃歌
ドロの様に
カビの様に
この足の傷にこびり付くのは
まだ薄ら雪広がる
木草弥や生ひ月より孵る虫

あいつはいつも
ブヨの様な羽音を立てて
静かな霜の静寂から
残り僅かな
靴底を剥ぎ取っている

その姿は往々にして
たわわに実った葡萄の房をもぎ取る
農夫の様でもあり
屈折した光を追い続ける
鏡の様でもあり
絶えず絶えず
わたしに憂鬱をもたらすのだ

悪びれる事もなく
穴だらけの箱に舞う地吹雪は
明日の景色さえ覆い隠し
瓶の中の抜け殻は
いつまでも
土に還る事無く
霞んだ瞳の奧へと
沈んでゆく

圧縮補正に導かれ
昨日の視点と
明日の視点の間にさえ
括れない
怠惰の卵を生みつけるのは
情感を無視された
悲しい心

何者かが

建築と無心の隙間に
蛆虫を解き放った。
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2009.03.13