23対の不明瞭な春
開かれた腹の上で
春の小鳥が謡っている

どろどろの
雪融け水が裾に絡む
解放された宙を彷徨い

ぷつぷつ吹き出た歩肢の数
疼くまなこで愛でている

地べたを這いずり
泥を纏ってゆく姿に
嫌悪感すら抱いていた
越冬前の思考回路は
歩肢を束ねる23対の胴に捲き取られ
性別という概念さえも
所詮無意味なものであると
日々暖かさを増す季節に酔う
傍若無人な曳航肢を
誇らしげに擡げている

晴天の下
十二指腸が笑っている

繋ぎとめるものは
絡み合う欲と欲

殴られ吊るされ
引きずり出され
鉄板の上で踊っている

これからの景色は
不必要になった荷物から解放されて
四方八方
それぞれの場所で
また、同じ雪融けの季節に
立ち会うのでしょう

数日前の私は崩れ
今現在の私が
大きな大きな顎肢を突き立て
迎春半ばの過去を
口器にて精算するのは
所謂、理というものに則った
逆らい様の無い
衝動なのでしょう

石の下
節々くねらせ
抱く卵に生は無く
佇む無気力
今も昔も

桜の花が咲く頃
私は次の夢に
不明瞭な望みを賭ける

大事に抱き続けた
色の無い建前を
喰らい尽くす頃には
クチクラに包まれた
体節制と体節制の凹凸より
くさび型の精を受け入れ
止め処無い春は
拡散してゆくのでしょう。
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2009.03.29