4桁では足りぬ無愧
黄土色の澱みが
ざばざばと犇き合いながら
かび臭い管の中を走ってゆく

木屑と朽ち葉の床では
聞き零した小言たちが
静かな熟成の中
糸を引いて悶えている

湿気
アンモニア臭

かりかり
かりかりと
枝分かれした暗闇の中
鮮明になってゆく気配に怯えながら
萎れはためく布切れ

もうこんなに
時間が過ぎてしまったのかと
小さな歩幅がぎこちない速度で
湿気った足跡を引き摺りながら
電信柱の張り紙の中で
腹黒い微笑みを浮かべる
スーツ姿の鳩にガムを塗りたくる

いつまでも
いつまでもこうしていたいけど
僕達はもう、保健所に行かなくてはならない

外灯の設置部から
おおよそ30cmほど下方に取り付けられた
4桁の黄色と黒の識別番号が
まるで今の僕達のようで
堪らなく痛い

空に無数の亀裂が走り
草、石、土、
見飽きたこの街のコンクリートが
包まれたポリエチレンの中でスライドし
流れてゆく

0000
0001
0002
0003
0004…。

4桁で足りるのだろうか?

…足りないだろうな
公式見解では事足りるだろうけど

カウントが
また一つ
また一つ積み上がって
根拠の無い数字が
誇らしげに白黒の紙面に踊る

0797
0798
0799…。

苦しみが駆け抜け
また一つ
また一つ積み上がって
根拠の無い数字の影に
朗らかな無愧(むき)が牙を剥く
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2009.06.16