燃える様な傷口から
老いた山羊が顔を出す

ビロード色の群集が
屈託の無い集束と共に
皮膚の内に食い込んでくるのは
欠如した免疫作用が
塞き止めるべき表皮に対し
誤った電気信号を
送っているからに他ならない

そう言えば
今日は朝ご飯を食べていない
骨の髄まで突き刺さった
赤茶けた釣り針は
怠惰な日常から徐々に浸透し
必要最低限の行動力すらも奪ってゆく

働かざる者喰うべからずとは
よく言ったものだと
働かざる思考回路が
予定調和の戯言を投げつける
愚かな矛盾と悪循環の中にあり
更なる問い掛けにより
価値を見出そうとする
上乗せされた矛盾と悪循環

メビウスの帯
草臥れても枯れる事無く
日替わりの言い訳で連鎖は続く…

密着する肌と肌の間で
頷くだけしか出来ない子供に
恰幅の良い男が斧を振り下ろす

ほらほら
共食いばかりしていては
あの人みたいに太ってしまいますよ

言い聞かせるのは
いつも教師達だ

しっかりと
前を見据えて前進しましょう
道中は決して
余所見などをしてはいけませんよ

小気味好く割れる
頭骨の響きに促され
鳥達がけたたましい声を上げ騒ぎ出す

裏山に自生する
鬼灯の葉は穴だらけだ

犯人の特定に至るには
口頭での注意事項に
背く必要が出てくるのでは？

問い掛けるだけで
何も動かない

自問自答どころか
これじゃあ
自悶自倒と言ったところか

わが身可愛さに
本質や意味すらも見失う
哀れな日常風景が
今日も明日も
箱型の劇場の中で
延々と繰り広げられるのだろう

間違った侭で居る事で
死ぬまで飴を与えられるのならば
いっそ此の侭でも構わない

こんな事では
いつまでもいつまでも
鈴なりに実る鬼灯が六角状の萼（がく）に
呑まれた侭ではないか

毒性が気になるなら
一つ一つ手作業で捕獲して
駆除していくしかあるまい

明日の朝
ポリ袋に入れて
ゴミに出してみるのも面白そうだ

窒息するのが先か
焼却されるのが先か
この視界が奪われるのが先か
先の見えない
思い込みだけが動力源となる
幸先の悪い道の果てを
目指してみるのも悪くは無い

燃えないゴミなら
土に還るその時まで
絶えず思考を巡らすまでだ