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冷え切った唐草色の背をなぞり
打ち上がる陽光が
広範囲に渡る
出鱈目な道標を取拉いでゆく

不気味な程の静けさに包まれた
湿ったコンクリート群と
僅かに添えられた
12対の脳神経

体温が奪われてゆく

ずぶ濡れで這い回り
立ち塞がる堅い壁に擦り寄る
身も蓋もない三叉神経

覗き込む者が誰なのか
どんな表情をしているのか
もはや私には読み取る事が出来ない

頼れるのは
此処に在るものではなく
何処か遠い場所に置き忘れてきた
幾許かの補正が施され
原型を留めているのかも曖昧な
霧の掛かった半生のみ

生身の体じゃあ危険過ぎる
至急、蛞蝓に殻を!

その口で
削り取ってやれ
堅く湿った権威主義者の一物を

石灰分が枯渇するのが先か
舌下神経の回復が先か
はたまた水分の消失が先か
この先の景色を知覚する為に
新たな神経回路が必要だ

イデオロギーの消失
ポストモダンの構築
対峙する現実と
向うべき局面に対して
12対の受容から生じるものでは
役不足で有る事は否めない

陽が照らす
陽が照らす
陽が照らし乾いてゆく

殻に篭ってやり過ごすんだ
未熟な付け焼刃であろうとも
僅かな時間は稼げるだろう

関節を外し皮を削ぎ
しっかりと眼を見開いて
意識在る限り
内に外に
崩れてゆくものを知覚するのだ

やがて陽は沈み
星の輝きも疎らな
陰鬱な空が覆い被さる頃には
私達の体や思考はバラバラに砕け
まるで夜空に浮かぶ星々の様な輝きで
プロパガンダに塗れた
この汚れた大地を彩るだろう

自覚無い者は
そのまま朽ちてゆくだけ

自覚在る者だけが
新たな自我と思想を
辺りに散らばる
夥しい数の肉片を繋ぎ合わせ
再構築してゆくのであろう

有機物の残骸が
一層分の厚みを増し
私達はまたほんの少しだけ
空へと近付いた
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2009.11.03