ある蜈蚣における       果実と価値観
眩しすぎたベランダから
一匹の蜈蚣が炙り出される

照り返す虚しさと
熱を帯びる
白昼喰らう白熱灯

満たされ過ぎて
溢れ出て
それ故
満たされぬ
樹状突起と筋線維

注がれ続ける
人口過多の白濁液

熟した果皮の
亀裂に沈む

植える事に
餓え続け
絶える事に
堪え続ける

熟した蜈蚣が
逆上せた頭を擡げながら
赤茶けた
定義と定義の狭間で
びくびくと
脈打つ自我へと埋もれてゆく

陽が闇と交えぬ様に
非が止み
交わる事も無い

誰も彼もが
分ち合った振りをしながら
別ちあった不利に慄く

夜が押し寄せ
朝が押し寄せ
また夜が押し寄せる

真っ暗なベランダでは
一匹の蜈蚣が
逆上せた頭を擡げながら
赤茶けた
定義と定義の狭間で
びくびくと
脈打つ自我へと埋もれてゆく
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2011.02.22