不条理の蟲
革靴の音が
薄暗い路地裏で
渦巻いている

じきに訪れるであろう
夢見月の寒暖に
その身を投げ入れ
来る事の無い目覚めに
苦しみを

くるくると
回るまなこの空しさに
狂う拍子の哀れさよ

蛇穴を出づ
なまめく山道の鳥居では
匂う獣のゐさらひに
すえた我が
性的素描をぶちまける

かち
かちかち
火石が火花を散らす度に
諸価値は
肥り膨張してゆく

独創的な感性も
慣性的な
歓声≠閑静に平伏し
調和の中へと組み込まれ
腐り落ちる矛盾

不協和を!
上位文化に
不協和を!

我が不条理の蟲は
春分の
土くれの許で
ただ静かに
雪解けを待っていた
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2011.02.28