愛しきものたちへ
覆い被さるは 深く重たい靄
気力すら奪い わたしの脳に張り付く。

奪われるは 愛しさと温もり
覚悟さえ奪い わたしの足に巻き付く。

―分かっていた筈なのにー

強い意志で塗り固めた石壁は
長く厭らしい湿気に浸食され苔生す。

巡る季節とあなたの面影。声。温もり。
根を張る愛しさ。

焼け焦げ湿気を帯びる 鉄の香りに火照らされ
あなたは もうじき此処を発つ。

残されるのは もう喋らないあなた。
刻の泥濘に嵌り 熱を奪われ朽ち逝く脱殻。

―結局 何ができたのだろう?―

覆い被さるは 深く重たい後悔。
気力すら奪い わたしの胸に張り付く。

残るのは 寂しさとひび割れた心。
自信さえ奪い わたしの足に巻き付く。

―愛している―

使い回され 価値を失った この言葉でさえ
今の私には 救いなのかも知れません。

偽善と言われても構わない。

あなたのいない今、心の底から言える。
『ありがとう』と。
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2007.03.11