大通りに面したショーウィンドウには
重い重い思い込みが
所狭しと陳列されている

交差する足音が
立ち止まる事のないまま
過ぎ去ってゆくだけの
辛辣で空虚に満ちた初夏の午後

軽い軽い軽業師が
平衡感覚を奪われ
次から次へと
石畳へと転落してゆく光景を
硝子越しに見つめながらも
沸き起こるのは
常に誰かの受け売り文句

頭骨が砕け散り
脳漿と肉片にトマトを塗した
見せしめの追放が
完遂された瞬間である

叛骨も仙骨も
歪む事すら許されない
相互監視の呪縛の雨が
翅を蝕むこの御時世
手足を広げ
網戸に張り付き誰を呼ぶのか？

弱者の着ぐるみを纏った強者が
ハエ叩きを振りかぶる日、
異物混入とは名ばかりの
建前見立てた
名誉毀損と社会正義が
白日の下に曝け出される

謳いながら嘯きながら
刷り返られた通念に
論点すらも焦点すらも
重なる意味すら履き違えてゆく
恐るべき大衆心理

誰でもいい、
窓の外のガガンボを
明くる朝まで匿ってくれ

情報網から拡散し
ステレオタイプを裏返すのは
か細い手足の虫の群れ

さあ、アンテナをすり抜けて
虫の羽音に耳を澄ませ！
無知のぬけがら後にして
新たな意味を見出すために！