膿の苦しみ
石段に腰掛けて
医師団に嗾ける
対峙するのは
狂犬病のクマネズミ
天然痘の執刀医

渡来人の重ねたる
繊維の往来
戦意の招来
流入するのは膨れた発疹
逆流するのは溢れた決心

夜空に乱れる六腑の滑りが
腹部より遺恨の帯を絡め取る
脱皮の刹那に生じたものは
五臓に宿った落葉樹
祈りを模すのは心電図

ひかりごけを纏った
金緑色の歌声が
送り火のうねりと絡み合い
静かな夜更けに
ぼんやりと浮かんでゆく

二度と届かぬその音に
剥れた両手を差し出して
石段の上の抜け殻は
膿の苦しみ踏み締める
生みの悲しみ噛み締める
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2012.08.16


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