回想録
閉じられた箱の前で
両膝を突いた藪医者が笑っている

平伏した視界の降格
執刀するその手には
水風船が握られ
自意識過剰な痛覚たちを
迫害するのだ

ヘドロの上へと重なった
表情筋は動かない
しどろもどろ
爪先だけが保身に走る
逆立つ うなじの回想録

突き付けられた
つまらぬ生活
剥き出しの骨を響かせて
黒いインクが軌跡を描く
白い印紙が鬼籍にえづく

手元に残った領収書
記憶の穴を埋め立てながら
忘れてしまった日々への追悼

さあ、そっと渡してご覧なさい
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2012.12.17


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