山頂より
乱雑に脱ぎ捨てた靴を
丁寧に揃えてみる

谷間は一向に晴れる事無く
湿気った草の上で
寝転ぶ事数ヶ月

澄み切った
青と白とのコントラストに
身も心も侵されて
鼻腔奧の神経に
山麓の筋が延びてゆく

寒くも無く暑くも無く
肌を撫でる蒸気だけが
この場と意識を連結させる

大の字で天を仰ぐ
霧の掛かった様な空
霧の掛かった様な頭
境界すらも曖昧に
足元の雲を掻き分け
泳いでいる

山頂の隙間に
瞳の放流
戻ってくる保証も無く
怒張した怠惰が
排水管の中を穿り返す

錦を翳せぬ響きに揺られ
意識を芳す色欲

気圧は腰を屈め
気骨は無視を決め込む
泣き出しそうなのは
空ではなく
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2013.01.20


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