持ち越して尚、
額縁に垂れ下がるつららを前に
抱き抱えてきた現実が
柔肌を開(はだ)けながら
膨らみを増してゆく

春を迎えるに当たり
我々には栄養が足りません

血の気の失せた顔色が
地吹雪に呑まれながら笑っている

ザクザクと雪を掻く
サクサクと腹を裂く
悴んだ手、はにかむ鼓動
一足早い温もりに
一刻早い朝日が昇る

コリコリと
腸を噛み締める
コツコツと
腹這いに積み上げる

腹を裂く花が咲く
融け始めの白日が
持ち越せぬものたちを
連れてゆく 消してゆく

春が来た
春が来たよ

喜びに身悶えながら
もぞもぞと這い出た先に
君の姿は見つからない

暖かな日差しの中で
持ち越したものの重さに
また圧し潰される

夏を迎えるに当たり
我々には栄養が足りません

血の気の失せた顔色が
桜吹雪に呑まれながら笑っている
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2013.02.12


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