花韮団地
階段の踊り場には
花韮たちの
首から先が転がっている

吹き寄せる風に
追いやられては
引っ掛かり
今日の思いを繋ぎ止める

憧れも夢も
記憶の形と異なる種子を
団地の中で育んでゆく

滑り台の下に
あなたの骨は植わっていて
無邪気な笑みに
その身を靡かせ
薄暗い遊歩道の隅にて
強かな蕾を
膨らませて 孕ませて
土の匂いに埋もれた指を
いつまでもしゃぶりつづける

味のしない指先に
吹き溜まる離別の調べ

さようならは言わないで
おかえりなさいが 聞こえる日まで

さようなら
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2013.03.04


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