亀の葬列
縫い目に沿って浸水する
負い目にそぐわぬ心酔

電話ボックスに忍び込み
手に取った受話器を毟り取る
傷口から溢れ出す言葉が
嘘偽りの無いものだとしても
環状に開いたクチクラに
透ける思いの腹黒さ

蛍光色のトマトを摘んで
君の口へと運んでみても
開かぬ存ぜぬ見知らぬ筋に
搾り取られて 果てる空しさ
待てぬ哀しさ
捨てぬ疾しさ 噛み千切る

膨れてゆく腹の内
窶れてゆく空の淵
溺れているから満たされる
浴槽程度の水と哲学

カビたタイルを擦り続ける
爪の隙間の興行師
風の吹く間に 傘の間に間に
亀の葬列 金の壮烈
括った紐と 見送る火元
骨も残さず 他に残せず
翌の綴りを 何処に記そう
欲の番いの 床に示そう

無線設備と至らぬ甲虫
舌の根元へ卵 産み付け
過去の絵の具と共に朽ちゆく
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2013.03.25


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