翅脈越し
窓を叩く音が
雨の降る間と交わらず
純朴な夜へと変色してゆく

眠りに落ちる度に命を落とし
目が醒める度に
何事も無かったかの様に
生を受ける

こんな当たり前の事でさえ
嚥下を通り越した
事後とも呼べる世界に措いては
絵面の欠けた
パズルにも等しい虚無の近影

目の触れぬところで
私の手は
何故
蒼ざめた
汗を流しているのだろう

暦の上では
整合性が取れている

それなのに

尾と尾が循環し
翅と翅とが相対する
ただこれだけの瞬間を
正確に記す事が
怖くて仕方がないのだ

飛んでゆく秋が
一つ
また一つと 数を増やす

不整脈が刻む今は
隊列を成して
ただ 針を進める
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2013.09.30


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