合い鍵
訪問先のアパートは
圧縮された静寂に軋んでいた

湯船に浸かる猫の目は
二枚舌の水垢に誑かされて
覗き込むもの その証さえ
弄ばんと水上を臨む

拾い集める想いなど
この苦しみには及ぶまい
膨らみ続けた事実すら
誰のものとも知れぬのだから

臭いの先で混じり合う
内向的な退行
観るに堪えない視点と始点

そらみたことか
観測者の首など疾うに
曲がってしまっているではないか

爪が喰い込み
皮膚の上へと轍が走る

回す鍵すら得られぬのなら
その鍵穴の空白を
私の血肉で埋めるといいさ
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2014.02.21


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