張り付いた日没
翅を隠す甲虫が
夕暮れの路地裏に消えてゆく

薄れてしまった血の色が
誰のものでもないように
忘れてしまった営みは
もう何処にもありはしない

紡がれてきた糸はただ
人と人とを繋げていただけ
遠退いてゆく背中には
力無く頽れる優しい思い出

もう誰もいないのに
また誰かの声がする

途切れた筈の足音は
逢魔が時の影法師

ほら また一つ殻を割ったよ

歓びの無い日没が
いつまでも
正面に鎮座している
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2014.05.05


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