転がる卵
彼はいつから其処にいたのか
冷え切った部屋には
確かに鍵が掛けられていて
視線が泳ぐ隙間は無かった

見つめる事が驕慢ならば
見られる事は謙譲でしょうか

真っ直ぐに前を見据え
奧へ奥へと到る程に
道は窄み 手は悴んで
納まりの好い
器の中へと迷い込む

窮屈な石の下で
初めて己の声を知るのだ

卵はいつから生きているのか
問い掛ける事で 筋が通い
空回りする命の詩が
車輪の様に
夜の帳を引き裂いてゆく
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2014.05.14


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