錆びた水
煙を吐く穴を覗き
戻らない声の行き先を
知った風に装う

擦り減った神経は
振り払った近景に比例して
夕霧に紛れた廃屋へ
爪の無い猫を呼び込んでいた

ずっと音は止むまい
掴み損ねた指の軌跡
伝え損ねた夢の布石
するりと抜けた
雪の戸籍

在る筈の無い結晶が
窓へと張り付き
温かな家庭に絆された
自我の喪失へと身を委ねる

残された水は
きっと血の様に赤いだろう

関連記事

2015.02.11


Secret