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剥がれた鱗粉
筆が記す前から
腕が取れる前から
眼前に言葉は漂っていて
浮き粕のような顔達を
掬っては投げ
巣食っては曲げて
谷底から湧き上がる
啓蟄の戯れに肌を委ねる
捕まえたきり帰って来ない
その事実だけがそっと
瘡蓋の下から滲み出す頃
翅を切られた蜻蛉の腹を
風が優しくさらっていった
虫篭の蝶は
いつから声を失っていたのか
開け放たれた
アパートのドアに刺さる
焼け爛れた鍵は
生前葬の
和やかな晩餐に思いを馳せ
何も映す事の無い
瞳の中へと納まってゆく
棺の中はもう間もなく
玉虫色の鱗粉で覆い尽され
幸せに満ちた人たちの
温かな声に包まれてゆく
腕が取れる前から
眼前に言葉は漂っていて
浮き粕のような顔達を
掬っては投げ
巣食っては曲げて
谷底から湧き上がる
啓蟄の戯れに肌を委ねる
捕まえたきり帰って来ない
その事実だけがそっと
瘡蓋の下から滲み出す頃
翅を切られた蜻蛉の腹を
風が優しくさらっていった
虫篭の蝶は
いつから声を失っていたのか
開け放たれた
アパートのドアに刺さる
焼け爛れた鍵は
生前葬の
和やかな晩餐に思いを馳せ
何も映す事の無い
瞳の中へと納まってゆく
棺の中はもう間もなく
玉虫色の鱗粉で覆い尽され
幸せに満ちた人たちの
温かな声に包まれてゆく
2015.02.25 ▲
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