戻らない啓蟄
ブロック塀の後ろでは
剥き出しの果実が匂いを放ち
空っぽの胃袋をぶら下げた
こわれものが奥歯を鳴らす

すり潰した景色だから
きっと消化はいいのだろうね
馴染まない輪郭に眉間を歪め
生真面目な肌を針が行き交う

濁った蒼が白むほどに
押し遣られてゆく影と沈黙

塗り潰された煙突が
覗き込むのは人の背中
チクチク刺さり
チクタク廻る

浮足立った啓蟄は
盤面の街へ戻ることなく

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2015.03.06


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