蠅の肢音
亀裂の生じるままに
座頭虫は肢を広げ
埋もれていた
花壇へと突き刺さる

アンテナが顔を覆い
コンテナに空を詰め込む
蕾の奧の疼きが熟し
曇天の蝶を
瘡蓋が覆う昼下がり
鬱血した腕の色が
失血した抜け殻へと寄り添い
置き捨てられた
季節の腐臭に胸を焦がす

捥ぎ取った果実はいつも
指先の圧に弄ばれて
首先の悦に持て余される

毟られた翅は風に吹かれ
背負うもの無き蠅の肢は
踊りを止める術も知らずに
残り物の種の上
果肉の汁を啜り続けて
皮肉な春を綴り続けてゆくのだろう

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2015.03.10


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