開花の痕
窓に映る影が
いつまでも持ち場を離れず
街灯に照らされた
雨粒の中へと
嘘の吉報を告げている

華々しい勝利の詩が
氷の下で蠢いて
温かい言葉の後ろで
握り締めた刃物が微笑む

冷たい空は他人事
煌めく星を
瞳の中へ宿した鼠が
薄明りをその背に纏い
真っ赤な返り血を浴びる頃
巣穴に潜んだ土竜の群れは
桜の開花に太鼓を鳴らし
剥き出しの
頭を曝して狂い咲く
奮い立つ

ああ この土は
何処まで続いているのだろう

萎んだ咽喉は揺れる事無く
一度きりの開花の痕を
路面に散らして 春へ殉ずる

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2015.03.11


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