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吸殻箱
誰も居ない
此処に居ない。
心細さにくるまれて
空き缶の下で震えるぼくは
小雨降る石畳の遊歩道
ひとり胡桃を割っている。
がんっ! がんっ! がんっ!
「はい、どなたですか?」
割れた胡桃の殻の中
錆鼠汁がたずねてきたよ。
「ぼくはぼくであります…。」
自信無さ気にこぼれた言葉は
芳醇な蜜の香りを振りまいて
吸殻箱の沼の上、
銀紙の船に乗ったぼくを
琥珀色に染めて行く。
誰も居ない
此処に居ない。
心細さにくるまれて
銀紙の中で震えるぼくは
蕭雨降る
吸殻箱の沼の上
ひとり魚を釣っている。
びんっ! ぐんっ! ざばぁっ!
「はい、どなたですか?」
釣れた魚のえらの中
錆鼠虫がたずねてきたよ。
「ぼくは、…誰なのですか?」
自信無さ気にこぼれた言葉は
醜悪などぶの臭いを振りまいて
吸殻箱の沼の上、
銀紙の船に乗ったぼくを
水底へと沈めて行く。
「…ああ、こんなところに。」
錆鼠色に淀む沼底、
ゆっくりゆったり融けあいながら
誰も居ない団地を
泡の中から眺めてる。
不思議と苦しさはなく
貫く様な快感だけがこの身を包む。
潰れた空き缶、きみのほね。
淀んだ沼に融けてゆく。
きみは錆鼠色に溶け合いながら
ぼくのからだをしゃぶりつくす。
ぼくのからだ きみのからだ。
おんなじからだ。
淀んだ沼に融けてゆく。
みんな居た。
此処に居たんだ。
心地良さにくるまれて
沼の底で微笑むぼくは
誰も居ない
寂れた団地の屋上で
ひとりくるくるまわってる。
此処に居ない。
心細さにくるまれて
空き缶の下で震えるぼくは
小雨降る石畳の遊歩道
ひとり胡桃を割っている。
がんっ! がんっ! がんっ!
「はい、どなたですか?」
割れた胡桃の殻の中
錆鼠汁がたずねてきたよ。
「ぼくはぼくであります…。」
自信無さ気にこぼれた言葉は
芳醇な蜜の香りを振りまいて
吸殻箱の沼の上、
銀紙の船に乗ったぼくを
琥珀色に染めて行く。
誰も居ない
此処に居ない。
心細さにくるまれて
銀紙の中で震えるぼくは
蕭雨降る
吸殻箱の沼の上
ひとり魚を釣っている。
びんっ! ぐんっ! ざばぁっ!
「はい、どなたですか?」
釣れた魚のえらの中
錆鼠虫がたずねてきたよ。
「ぼくは、…誰なのですか?」
自信無さ気にこぼれた言葉は
醜悪などぶの臭いを振りまいて
吸殻箱の沼の上、
銀紙の船に乗ったぼくを
水底へと沈めて行く。
「…ああ、こんなところに。」
錆鼠色に淀む沼底、
ゆっくりゆったり融けあいながら
誰も居ない団地を
泡の中から眺めてる。
不思議と苦しさはなく
貫く様な快感だけがこの身を包む。
潰れた空き缶、きみのほね。
淀んだ沼に融けてゆく。
きみは錆鼠色に溶け合いながら
ぼくのからだをしゃぶりつくす。
ぼくのからだ きみのからだ。
おんなじからだ。
淀んだ沼に融けてゆく。
みんな居た。
此処に居たんだ。
心地良さにくるまれて
沼の底で微笑むぼくは
誰も居ない
寂れた団地の屋上で
ひとりくるくるまわってる。
2007.09.10 ▲
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