季春の強欲
石畳に萌える草が
記憶の縁へと添えられて
砂漠と見紛う裏庭に
優しい卯月の風が吹く

恨み節に塗れた残雪
黒く爛れた傷跡 隠して
虫が湧くのを待っている

割れた硝子が抱える空は
片手に収まる程に小さく
宇宙を呑み込む程に大きい

解ける結晶
潤いを得た土の血漿
無欲が齎す
有り余る季春の強欲
関連記事

2015.03.25


Secret