ささやかな寝床
どろどろの山道に残る靴跡
水溜りの底は
まだ誰の心も埋もれていない

生え揃わない歯が
作り掛けの消化器官へ
不完全な咀嚼を詫びる季春

繊維質の骨はいつまでも
泥の表層に折り重なって
底冷えしたビルの谷間へ
未熟児たちの
縋る思いを組み込んでゆく

喰らうのも喰らわれるのも
一瞬の価値の交差
囚われて消える幸せ
放たれてまた喰らい合う

刳り抜いた眼球が映すのは
いったい
何処の街並みなのか

水飛沫が上がる度
廃屋に一つ灯りが宿り
ささやかな寝床が
朽ち果ててゆく

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2015.04.03


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