渡らぬ虹
羽根を休める一時に
屋根を敲いて弾ける日差し
蒸し上がった雨の色香に
惚けた頭を窘めながら

草を伝ってゆく日々は
水に刻んだ記憶の残骸
苔生した石畳
吸われて今は天を見据える

渇いた咽は幸せだろうか
吐き出した矢の行方
突き出した鉄柵は
去りゆくものを絡めはしない

寝そべる先に
蒲公英の花が咲いていた
まだ俯いて
それでも決して折れる事無く

天井の見える庭園は
雨上がりの虹でさえ
その懐へと馴染ませる

彼はもう
何処へも飛び立つ事は無い

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2015.04.03


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