狼と子山羊
柱時計に潜む子山羊は
見知らぬ路線の夢を見た

霧に沈んだ大通り
見下ろす階下の灰褐色
冷めたスープに浮かぶ視線は
逆上せた朝日を遠ざける

目を合わせてはいけないよ
昇る足音 降りる緞帳
幕の裏から覗き見る日々

意外と優しい顔をしている
狂気と正気を隔てるものは
布一枚の息遣い

今はこれでも構いやしない

無人駅のホームに座り
擦れ違うばかりの
車両を見送る

さようならも言えないままに
駅の名前は色褪せてゆく

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2015.05.28


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