レンズ
こんにちは。
いつもと変わらぬ陽の下の
いつもと変わらぬ笑顔。

呼びかけるのは
幼馴染みの君の声。

いつもと変わらぬ道の
いつもと変わらぬ時なのに
何故だか
君が歪んで見える。

吹き荒ぶ風が笑み
見慣れた地平に綿が舞う
空き缶は
砂粒の中 音を立て
くびれた形で水を得るのか?

落葉樹の幹の下
少し日に焼けた長閑な日、
いつもと変わらぬ樹の下の
いつもと変わらぬ薫りなのに
何故だか
君の瞳が5つに見える。

水を得て
焼け付く脳幹 熱を帯び
深呼吸と黄昏に
記憶のネガをかざしてみても
写っているのは君と僕、
いつもと変わらぬ君と僕。

ああ、そうか。
君が歪んで見えたのは

コンクリートの壁の中、
震えて捩れ 芽を出した
自我に怯えて根付くから。

変わったのは君ではなく
囲いを壊した 僕の主観。

生まれたばかりの鉄くずは
刷り込みと教育の中で缶となり
常識という名のつまらぬ色に
疑う事無く染まって行く。

ねぇ、君は・・・
いつもと変わらぬ陽の下の
いつもと変わらぬ笑顔。

呼びかけるのは
幼馴染みの僕の声。
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2008.01.17