世界の片隅で愛を叫ぶ
愛と哀が絡み合う。
僕と君が絡み合う。

長い長い階段下り
幾重も続く分厚い扉。
暗い暗い 地下の小部屋。
紅い紅い 智価の孤部屋。

闇を泳ぐ  翡翠色の大きな瞳。
夜観を知らぬ翡翠色の雄雄きな独身。

小さな灯火 闇を裂き、
僕と君の影が咲いた。

嬉々と棚引く愛しい尾。
嬉々と顔を摺り寄せる。

…愛してる。
僕は君に口付けた。

…哀、知ってる。
それは叶わぬ恋だとも。

君の頭を優しく撫でる。

滑らかな鱗の温もり。
心地好い獣毛の触感。

君は優しく瞳を閉じ、
僕に甘え喉を鳴らす。

大きな角。尖った耳。鋭い牙。 …力強い翼。

君は何よりも美しい。

被造物の僕が創った在らざる命。
被造物の被造物。
背徳の命。

もどかしい。

君と手をつなぎ
陽の光の下、歩けないなんて。
君と手をつなぎ
祝福の道、歩けないなんて。

小賢しい。
自称、神の忠実な僕(しもべ)。
喧しい。
自称、モラリストども。

僕はこの仔を愛しているんだ。


恋路を阻む
衆愚群れ群れ 魑魅魍魎。

だから僕は
長い長い階段下り
幾重も続く分厚い扉。

暗い暗い地下の小部屋

小さな小さな灯火の下
君に優しく口付ける。

愛と哀が絡み合う。
僕と君が絡み合う。

僕と君の花が咲いた。
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2006.06.06