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綿毛
気がつけば
ぼくはそこにいた。
敷居など無い空の下
見渡す限りの景色の中で
それが自由なのだと習って。
松蝉の
奏でる音色に聴き惚れて
色とりどりの花たちに
時に胸を高鳴らせては
「これが青春なのだ」と
皆、口々に唱え、唱えては笑う。
ぼくは内心退屈さを覚えながらも
これはきっと、心の底から素敵なものなのだと
懸命に懸命に
それらを基準と見定めながら
少し気取ったポーズをとってみたりするのだ。
(…実に下らない。)
そんな言葉を必死に噛み殺しながら
次第に虚ろになって行く瞳を眺め
さぁ 耳鳴りすらも取り除いてしまおうかという折、
不意に中耳内の耳小骨へと傾れ込み
やがて蝸牛へと到達した蟋蟀(こおろぎ)たちの翅の音は
無理矢理に押し込めては
その中を窒息させんとばかりに垂れ流されてきた
人工的な一般論によって塗り固めた
糞下らない既成概念という名の固形物(アスファルト)を
それは小気味の良い音と共に粉砕したのだ。
ああ、そんな簡単な事だったのか。
徐々に重みが退いてゆく
胸の奥底 疼くのは
子房が包んだ白い冠毛。
ここはぼくの居場所じゃない。
望まずに、置かれた土地の根は深く
引き抜く事は叶わないけど
それでも
自分の視野を信じて行こう。
うつむくことも時に大事で
立ち止まるのも無駄じゃない。
後ろ向きでも生きた眼で
哂う奴らを見下そう。
「前向きに」と死んだ眼で
群れてる奴らにゃ 解らんだろうが。
しつけ通りの奇麗事を振りかざし
他人の心を踏み荒らしては
優越感と虚栄心に支配され
垂れ流される情報に毒されながら
根を張り動けぬその土地で
やがて腐って逝くだけさ。
さあ、冠毛を育てよう
奴らにゃ見えない冠毛を。
望まずに、置かれた土地の根は深く
引き抜く事は叶わないけど
それでも
心は綿毛と共に
自由に飛んで行けるはずさ。
暖かな
旅立ち告げる春風は
やがて ぼくらの心を
空へ、空へと押し上げていった。
卯月 彩る 稲(さ)の座(くら)を
横目に 今日も 風まかせ。
ぼくはそこにいた。
敷居など無い空の下
見渡す限りの景色の中で
それが自由なのだと習って。
松蝉の
奏でる音色に聴き惚れて
色とりどりの花たちに
時に胸を高鳴らせては
「これが青春なのだ」と
皆、口々に唱え、唱えては笑う。
ぼくは内心退屈さを覚えながらも
これはきっと、心の底から素敵なものなのだと
懸命に懸命に
それらを基準と見定めながら
少し気取ったポーズをとってみたりするのだ。
(…実に下らない。)
そんな言葉を必死に噛み殺しながら
次第に虚ろになって行く瞳を眺め
さぁ 耳鳴りすらも取り除いてしまおうかという折、
不意に中耳内の耳小骨へと傾れ込み
やがて蝸牛へと到達した蟋蟀(こおろぎ)たちの翅の音は
無理矢理に押し込めては
その中を窒息させんとばかりに垂れ流されてきた
人工的な一般論によって塗り固めた
糞下らない既成概念という名の固形物(アスファルト)を
それは小気味の良い音と共に粉砕したのだ。
ああ、そんな簡単な事だったのか。
徐々に重みが退いてゆく
胸の奥底 疼くのは
子房が包んだ白い冠毛。
ここはぼくの居場所じゃない。
望まずに、置かれた土地の根は深く
引き抜く事は叶わないけど
それでも
自分の視野を信じて行こう。
うつむくことも時に大事で
立ち止まるのも無駄じゃない。
後ろ向きでも生きた眼で
哂う奴らを見下そう。
「前向きに」と死んだ眼で
群れてる奴らにゃ 解らんだろうが。
しつけ通りの奇麗事を振りかざし
他人の心を踏み荒らしては
優越感と虚栄心に支配され
垂れ流される情報に毒されながら
根を張り動けぬその土地で
やがて腐って逝くだけさ。
さあ、冠毛を育てよう
奴らにゃ見えない冠毛を。
望まずに、置かれた土地の根は深く
引き抜く事は叶わないけど
それでも
心は綿毛と共に
自由に飛んで行けるはずさ。
暖かな
旅立ち告げる春風は
やがて ぼくらの心を
空へ、空へと押し上げていった。
卯月 彩る 稲(さ)の座(くら)を
横目に 今日も 風まかせ。
2008.04.15 ▲
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